CBTセッションが足踏みするとき:それは技法ではなく両価性だと見抜く4つのサイン
CBTの技法を磨く前に、クライエントの両価性のサインを確認しましょう。Westra & Norouzian(2018)によるセッション内の4つのマーカーと、MIへ切り替える5ステップ。

この記事のポイント
CBTセッションが繰り返し足踏みするとき、問題は技法ではなく両価性にあるかもしれません。Westra & Norouzian(2018)は、話題の転換、「はい、でも」反応、沈黙の増加、念入りなホームワークの言い訳という4つのマーカーが、セッション内の両価性を示すと述べています。抵抗は固定したクライエントの特性ではなく、臨床家の応じ方によって変わるものであり、動機づけ面接(MI)をCBTに統合すると長期的な結果が有意に改善しました。これらのマーカーを見分け、しばしMIモードに切り替えることで、行き詰まったセッションは再び動きはじめます。
良い介入が足踏みしたら、両価性に耳を澄ます
しっかりとした認知行動療法(CBT)の介入を行ったとします。クライエントは理解し、セッション間の課題も一緒に合意しました。それなのに次のセッションでは、また同じ場所に戻っている。「今週はちょっと大変で」と言い、ホームワークは手つかずのまま――。
このパターンが繰り返されると、臨床家としての本能は、たいてい技法を磨く方へ向かいます。もっと明確に説明する、課題をもっと具体的に構造化する、根拠をもっと鋭く示す。しかしWestra & Norouzian(2018)の研究は、まったく別の方向を指し示します。この状況は、クライエントの抵抗でも動機づけの欠如でもなく、セッションのなかで立ち現れる両価性(アンビバレンス)のマーカーなのです。そして、私たちがそのマーカーにどう応じるかが、治療の長期的な結果を左右します。本稿では、CBTのなかで両価性のマーカーをどう見分け、動機づけ面接(MI)へ意図的に、かつ一時的に切り替えるにはどうすればよいかを取り上げます。
良い技法でも行き詰まる理由 ― 両価性のしくみ
変化への両価性は、病理ではありません。変化とは、新しい何かを得ると同時に、慣れ親しんだ何かを失うことでもあります。クライエントが不安回避の行動をやめれば、不安はやわらぎますが、その行動が与えてくれていた安心感もまた失われるのです。
この両価性が探索されないままスキル訓練が始まると、クライエントは技法を学んでも、変化へと十分に踏み出さないことがあります。表面上は同意していても、内側では維持トーク(現状にとどまる理由)が流れ続けている。これはクライエントの性格の特徴ではありません。変化のプロセスに自然に伴うものなのです。
Westra & Norouzian(2018)が見いだしたこと ― 抵抗はクライエントの特性ではない
| 知見 | 範囲・方法 | 要点 |
|---|---|---|
| Westra & Norouzian(2018) | CBT内の抵抗プロセス研究の統合 | 抵抗はクライエントの特性ではなく、セッション内の相互作用上のマーカーである |
| CBT+MIのRCT結果 | 全般性不安症、長期フォローアップ | CBT+MIは長期的な結果でCBT単独を有意に上回った |
| 時間経過に伴う効果 | 同研究、追跡観察 | その優位性は時間とともに薄れず、むしろ拡大した |
彼らの研究からは、2つの中心的な知見が導かれます。
第一に、CBTセッションに現れる「抵抗」は、固定したクライエントの特徴ではなく、その場その場の相互作用上のマーカーだということです。同じクライエントでも、ある臨床家とは多くの抵抗的な振る舞いを見せ、別の臨床家とはほとんど見せません。
第二に、全般性不安症を対象としたランダム化比較試験(RCT)において、CBTにMIを統合した群は、CBT単独より長期的に有意に良好な結果を達成し、その優位性は時間とともに縮むどころか広がりました。言い換えれば、両価性が十分に扱われたクライエントは、終結後も自力で変化を維持し続けたのです。
注意すべき、セッション内の4つの両価性マーカー
Westra & Norouzian(2018)は、CBTセッションの内側に現れる4つの両価性マーカーを記述しています。
| マーカー | セッションでの現れ方 | 何を示すか |
|---|---|---|
| 話題の転換 | 唐突に別の話題へ移る | いまの焦点から引き離そうとする力 |
| 「はい、でも」反応 | 「はい、でも…」――同意のようでいて実は拒否 | 表面的な同意、内側の維持トーク |
| 沈黙の増加 | いつもより長い間、一言だけの返答 | 関与からの撤退、つながりの低下 |
| ホームワークの言い訳 | 詳細で長い説明、理由のバリエーション | 課題そのものへの両価性 |
**ひとつのセッションで同じマーカーが2回以上現れたら、技法を押し進めるのをやめましょう。**しばし、MIモードに切り替えるのです。
CBTからMIへの切り替え ― 5ステップの実践
1. マーカーに気づく ― 評価ではなく認識
マーカーが現れたとき、最初の一手は評価ではありません。認識することです。
「ああ、クライエントはこの話題から離れていこうとしているな」という内的なメモ――そこから切り替えが始まります。その認識がないまま技法を押し続ければ、両価性を増幅させるだけです。
2. いったん止める ― 技法を置く
マーカーに気づいたら、進めていたスキルワークをそっと脇に置きます。
「少し立ち止まってもいいですか。お話を伺っていて、いまちょっと何かが重くなったように感じたのですが、そんな感じはありますか」
この一文が、重心を技法から関係性へと移します。
3. 両価性を受けとめる ― 両方の声を聴く
両価性を探索するというMIの中核スキルを適用します。
「変わることにも、いまのままでいることにも、きっとそれぞれ良い面があるのだと思います。その両方を一緒に見てみませんか」
両価性を探索することの核心は、維持トーク――現状にとどまる理由――を罰することなく検討することにあります。維持トークは抵抗ではありません。それは、実際の人生のなかで変化がいかに複雑かを表す表現なのです。
4. チェンジトークを映し返す ― 取り逃さない
クライエントが変化の理由・意欲・能力について語った瞬間――それがチェンジトークです。その瞬間を逃さず、映し返しましょう。
「いまさっき『やっぱり良くなりたい気持ちはある』とおっしゃいましたね。その気持ちは、いつ頃からありますか」
チェンジトークを引き出し探索することは、動機づけ面接で最も強力なスキルのひとつです。
5. 技法へ戻る ― クライエントの準備が整ったら
両価性が十分に探索されると、クライエントは自分から変化へと傾きはじめます。この時点でスキルワークに戻ると、これまで見られなかったレベルの関与が引き出されることがしばしばあります。
「では――今日は、その方向に向けてひとつだけ試してみませんか」
CBTとMIは競合しない ― 統合して使う
CBTとMIは異なる理論的基盤に立っていますが、実際の臨床では相補的に機能します。
| 状況 | より適したモード |
|---|---|
| クライエントが技法を学ぶ準備ができている | CBTのスキルワーク |
| 両価性のマーカーが現れる | MIモードに切り替える |
| 動機づけと方向性が明確 | CBTに戻る |
| 治療の初期、準備状態が不確か | MIから入る |
**一回のセッションの中でも、CBTとMIのあいだを流れるように行き来できます。**これこそ、Westra & Norouzian(2018)が示した統合のかたちです。
行き詰まったセッションに必要なのは、より良い技法ではないかもしれない
Westra & Norouzian(2018)の知見は、CBTの臨床家に重要なメッセージを投げかけます。セッションが足踏みしたとき、技法を磨くことが答えとは限りません。必要なのは、いまこの瞬間のクライエントの両価性を受けとめる、たった一文なのかもしれません。
4つのマーカー――話題の転換、はいでも、沈黙の増加、ホームワークの言い訳――が見えたら、いったん止まる。そして、こう言ってみてください。「いま、ちょっと重くなったように感じたのですが、そんな感じはありますか」。その一文が、行き詰まったセッションを再び動かす出発点になり得ます。
参考文献
- 1.
よくある質問
両価性と、本当のクライエントの抵抗をどう見分ければよいですか。
Westra & Norouzian(2018)は「抵抗」そのものを、固定したクライエントの特性ではなく、その場その場の相互作用上のマーカーとしてとらえ直しています。同じクライエントでも、ある臨床家とは多く、別の臨床家とは少なく現れるのです。実践的には、セッション内の4つのマーカー(話題の転換、「はい、でも」反応、沈黙の増加、念入りなホームワークの言い訳)に注目します。これらが重なって現れたら、乗り越えるべき対立ではなく、探索すべき両価性として扱いましょう。
セッション中、いつCBTからMIへ切り替えるべきですか。
有用な目安は、両価性のマーカーがひとつのセッションで2回以上現れたときです。技法をより強く押し進めるのではなく、いったん止まり、気づいたことを言葉にし、クライエントの両価性の両面を探索します。チェンジトークが現れ、クライエントが変化へ傾きはじめたら、スキルワークに戻ることができます――しばしば、目に見えて強い関与とともに。
CBTにMIを統合すると、本当に結果は改善しますか。
全般性不安症を対象としたランダム化比較試験では、CBTにMIを統合した群がCBT単独より長期的に有意に良好な結果を生み、その優位性はフォローアップを通じて薄れるどころか拡大しました。これは、クライエントが終結後も変化を維持し続けたことを示唆しています(Westra & Norouzian, 2018)。
本記事は、Modalia AIの臨床ガイドラインに基づいて作成・チェックされ、公開前に専門家による確認を経ています。
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